ブランドジュリエ paris通信 ジャックマール・アンドレ美術館

猛暑のパリ、

ジャックマール・アンドレ美術館へ。

 

 

パリは8月頭から、気温が38度ほどまで上昇する毎日です。
日本も、ようやく梅雨が明けたと思ったら、
暑い毎日が続いていると聞きます。

 

日本と違ってフランスでは、
冷房を完備している一般家庭はまれ。
パリの場合は景観保護のために
室外機の設置が不可という理由もありますが、
そもそも冷房の必要のない土地なのです、
つい20年ほど前までは。

 

ウィキペディアに
1881年以降のパリの平均気温データがあるので、
検索していただくとよく分かると思います。
それによると6月〜8月の平均最高気温は、
滅多に25度を超えていません。
25度なら、冷房なしで過ごせますね。

ところが・・・
去年の夏、私は生まれて初めて気温48度を体験しました!
マラケシュではなく、ここパリで!

地球温暖化は恐ろしいところまで来ているようです・・・

 

冷房のない、暑いパリの過ごし方として、
美術館めぐりは私のお気に入りです。
美術館は冷房を完備していますから!

図書館もいいですが、
コロナ禍以降は以前のような使い勝手は望めません。

というわけで、前置きが長くなりましたが、
先日ジャックマール=アンドレ美術館へ行きました。
在仏23年にしてようやくです。

 

 

 

ジャックマール・アンドレ美術館、ご存知ですか?

パリのリピーターさんの中には、
すでに訪問された方も多いと思います。
銀行家の家庭に生まれ、
ナポレオン3世に仕える政治家となった
エドワール・アンドレが、
画家であった妻ネリー・ジャックマールと共に
世界中を旅して集めた美術品を展示する19世紀の大邸宅。

 

 

美術館のサイトによると、
エドワール・アンドレ氏はいわゆる早期退職をして、
自分の趣味、すなわち美術品収集を始めたのだそう。
その後、自身の肖像画作成を、当時人気肖像画家だった
ネリー・ジャックマールさんに依頼。

こうして2人は出会い、
美術品収集という共通の趣味に情熱を傾け、
生涯を共にしたのだそうです。

アンドレ氏は当代屈指の富豪ブルジョワ家出身、
ジャックマールさんは
一般家庭出身で職業画家になった女性。
アンドレ氏ファミリーは皇帝派、
ジャックマールさんファミリーは王家派、
と、バックグラウンドは正反対の2人でしたが、
とてもいい夫婦になったというのですから素敵です。

 

 

収蔵品は、ルネッサンスのイタリア絵画、
18世紀のフランス美術品、インドや日本のオブジェなど。

でも、この美術館に入ってすぐに思いました、
「これらの美術品を鑑賞すること以上に、
19世紀フランスの大ブルジョワジーが暮らした
大邸宅を体感することに意義がある」と。

贅を尽くした当時の暮らしがどんなものだったのか、
小説や映画の世界ではなく、
実際にその中に入って知ることができるわけです。
間取りや各空間の配置の仕方など、
実際にその場に立ってみてわかることは多いと思います。
ニッシム・ド・カモンド美術館もそうですね。

 

ということで、今回の見学は、
インテリアに注目することにしました。
ブランド・ジュリエファンの皆様も、
きっと喜んでくださるはず!

 

赤い壁に覆われた「絵画の間」から、
アーチ型の窓辺を持つ「大広間」へ。

たっぷりとしたカーテンのボリューム感と、
凝った細工のタッセル。
存在感がものすごい、
邸宅のカーテンを観察するのが好きです。

暖炉の上には、金の置き時計と、お揃いの金の燭台。
ザ・フランス! という感じで、
左右対称、
安定感のあるクラシックな装飾のルールでありお手本。

 

暖炉の足元に目をやると、板張りの床のなんと見事なこと!

 

大広間の床は、床だけ見ても工芸品の美しさです。
19世紀に生まれたオスマニアン建築の特徴の一つが、
この板張りの床といいますが、
本当になんて贅沢なことでしょう。

 

 

ここは、「書斎」へ向かう通路の間。
ネリー・ジャックマールさんは、
この館を収蔵品ごとフランス学士院に寄付したのですが、
その時にどの作品、どの調度品を、どこに飾るか、
細かく指示したそうです。

そう知って眺めると、
ますますインテリアが面白く感じられます。

 

こちらが「書斎」。シャンデリアに注目!

 

 

「音楽の間」では、上階部分に演奏家たちを集め、
下のフロアで舞踏会を繰り広げたのだそう。
空間のダイナミックさといい、
ルイ16世スタイルの椅子といい、
圧倒的な迫力があります!

この「音楽の間」の向こうにある「冬の庭」が、
今回の私のいちばんのお気に入りでした。

 


 

優美な曲線を描く螺旋階段。
鉢植えの植物が映える、大理石の色使い。採光。

贅沢とはこのこと!

美術品収集も贅沢ですが、
南国の植物をパリの邸宅にもつことも、
当時は相当な贅沢だったと思います。

この「冬の庭」の先に、「喫煙室」がありました。

 

中国から渡った巨大な壺が、部屋の入り口の左右に配され、
オリエンタルなオブジェが目立つこの空間に、
日本のものは?
と思ったら、ありましたよー、暖炉の上に伊万里が2つ!

ここでもやはり、左右対称、
安定感のあるクラシックな内装テクニックです。

 



さあ! リボンのように軽やかで
優美な螺旋階段を登って、2階へ!

 

 

 

上から見下ろす「音楽の間」。実に洒落た作りですよね。

 

 

ここから先は、イタリア美術に捧げられた空間です。

アンドレ氏とジャックマールさん、
お2人は自分たちの収集品にふさわしい空間を作るために、
わざわざ工事まで行ったそうです。

イタリア美術の空間は、まるでベネチアです!!

重々しい天井の細工!

そしてなんと、ボッティチェリがありましたよ!
私はこの美術館の収蔵品に関する知識が全くないまま見学していたので、
ルネッサンスの巨匠の作品を
個人がコレクションしていたことに、
本当にびっくりしてしまいました。

コレクションの詳しい情報は、
美術館のオフィシャルサイトをご参考に。

 

1階に降りて、こちらがジャックマールさんの寝室。

 

 

向かい側に、ジャックマールさんの書斎がありました。
肖像画の女性が、ジャックマールさんです。

明るくて、華美すぎない
清楚さのあるこの書斎で仕事をする・・・夢です。

 

 

ジャックマールさんの寝室の先に
プライベートのサロンがあり、
その先にアンドレ氏の寝室がありました。
それぞれの部屋が廊下なしに一つづきになって
ドアで仕切られているところ、
まるでヴェルサイユです。
個室で区切らない、大邸宅ならではの間取りでしょうか。

プライベートサロンで、ご夫婦は朝食をとったのだとか。

壁にはジャックマールさん作の、
家族の肖像画が飾られています。

アンドレ氏の寝室は、
奥に魅惑のバスルームが併設されていました。
奥様の寝室に書斎があって、
ムッシュの寝室にバスルーム、
というのが、意外というか面白いというか。

でもこのラデュレの世界さながらの寝室を見ると、
アンドレ氏は相当繊細な
感受性の持ち主だったのではと想像されるのです。
身だしなみも、それこそ女性以上に気遣っていたのでは。

 

見学の後はもちろん、
美術館併設のサロン・ドテでティータイムを楽しみました。

タピスリーのかかったバンケットルームで、
パッションフルーツのタルト、ミルフイユ、
ベッジュマン&バートンの紅茶。

もし私が19世紀に生まれていたら、
庶民の私はこんな世界があることすら一生知らず、
ましてやこの空間に立つことなど
あり得なかったわけです。

 

と、しばし時間旅行に出かけるような体験でした。

実は現在、企画展の「ターナー展」が開催中で、
とても話題なのですが、
今回のパリ通信では触れなくても良いと感じます。

 

19世紀フランスの、大ブルジョワジーのインテリア、
ご堪能いただけましたか?

そして、もし猛暑のパリ滞在をすることになったら、
美術館巡りがおすすめです!

次回も夏のパリリポートをお届けします。

どうぞお楽しみに!

それではまた、アビアントー!

 

ジャックマール=アンドレ美術館

Musée Jacquemart-André
158, bd Haussmann 75008 Paris

https://www.musee-jacquemart-andre.com/fr/home

 

 Keiko SUMINO-LEBLANC
 パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者

 1997年からパリに移住。
パリでの結婚・子育てを経て
フリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、
フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。

keiko’s paris journal <パリ通信 – KSL> パリのライフスタイルを更新中

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