ブランドジュリエ Paris通信 ベアトリス・ラヴァル①
ベアトリス・ラヴァルさんのパリのご自宅を訪問!①
ブランドジュリエのオーナー中川麗子さんが、
「色の天才!」と賞賛する
ベアトリス・ラヴァルさんのご自宅を
中川さんに代わって訪問しました!
ベアトリスさんは、ファブリックブランド
「Le Monde Sauvage(ル・モンド・ソヴァージュ)」の
デザイナー兼社長です。
ル・モンド・ソヴァージュ、
「野生的な世界」という名のこのブランドは、
ベアトリスさんのご両親が1970年に創業したのだそう。
「世界中を旅して、
その土地で見つけた面白いものを買い付ける。
そんな父に連れられて、
私も子供の頃から中国や日本を旅行したものです。」と、
ベアトリスさん。
“有名ブランドの女性社長”で、
“マレ地区の100㎡越えのアパルトマンに住んでいる(裕福な方)”
という情報からは想像できない気さくさで、
会話がどんどん弾んでゆきます。
きっと中川さんも、いつもこんな感じで楽しく
近況報告をしているのだろうな、と想像してしまいました。
さあ、パリらしいオスマニアンスタイル(19世紀の建築様式)のアパルトマンの、最上階のドアを開けましょう。
するとそこは空に浮かぶ、光あふれる空間です。
「アパルトマンを囲むように、
ぐるりとテラスが巡っています。
この広いテラスに魅せられて、
どうしてもここに住みたいと思いました。
本当は、以前住んでいたアパルトマンよりも
広い物件を探していたのに、逆に狭くなったのですよ(笑)。
それくらい惚れ込んだアパルトマンです。」
ベアトリスさんは物件を購入すると、
大々的な内装工事を行いました。
壁を取り払い、間取りを変え、
キッチンやバスルームの場所を移動し、
スチールの階段を取り付けて、
上下2階からなるアパルトマンが完成。
「元々の間取りは旧式で、玄関のドアを開けて中に入ると
玄関ホールのような閉ざされた空間でした。
その壁を取り除き、ご覧の通りの開放感を実現しています。
ただし、玄関とリビングの間には
精神的な仕切りが欲しかったので、
玄関部分の空間を黒で統一することに」
と、ベアトリスさん。
黒という色は、パリの室内にはあまり見られない色です。
「私たちの祖父母の時代までは、黒は葬式の色でした。
今でこそプチット・ローブ・ノワール(黒いワンピース)は
人気のアイテムですが、
それでも文化的に、そして習慣的に、人々は
黒から葬式を連想してしまうものだと思います。
そんな理由から、
人々は内装に黒を避けるのではないかしら。」
●では、なぜベアトリスさんは黒を取り入れるのでしょう?
「黒は、他の色の魅力を最大限に引き出す色だと思います。
玄関に黒を使ったことで、リビングの明るさや他の色が、
いっそう際立っていると感じませんか?」
玄関部分の壁には、
ル・モンド・ソヴァージュの壁紙が使われています。
この壁紙、ブランドジュリエのYouTubeで、
中川さんが使い方を説明していました!
インドの木版技術でプリントした壁紙は、
手作り独特のムラや不揃いが見られ、
それがこの壁紙ならではの持ち味であり、魅力です。
「私の友人たちからもとても好評で、
大勢が使ってくれています。
でもなぜか誰もドアを黒に塗るところまではしません。
『ぜひドアを黒く塗って! そのほうが絶対素敵だから!』と、いつも力説しています。
そしてちゃんと実行してくれた友人からは
『そうね、黒く塗り直した方が素敵』と、
いい反応が返ってきています。」
なるほど!
確かにベアトリスさんの住まいを見ていると、
黒が効果的な引き締め役を果たしている事がわかりますし
もしドアが白だったらせっかくの壁紙も
ここまでおしゃれには見えなかったでしょう。
●リビングにはブルーが多用されています。
壁に、本棚に、ドアに、ブルーのペンキが使われています。
ブルーがお好きなのですね?
「うーん・・・そういうわけでもないのですよ。
ブルーよりも、最近はグリーンに惹かれていて、
クッションやタピスリーなどに
グリーンを取り入れています。
リビングにブルーが多いのは、
きっとこのアパルトマンが最上階にあって、
窓の外が空だからだと思います。」
●つまり、ベアトリスさんにとって、
色は「場」そのものが決めるもの、ということでしょうか?
「はい。もし別のアパルトマンだったら、
別の色を選んでいたことは確かです。
たとえ同じ建物の中にある別のアパルトマンだとしても、
1階と最上階ではまた違うはず。
光も違えば、窓から見える景色も違いますから。」
その「場」「空間」をよく観察して、
そこにふさわしい色を選ぶ。
なかなか高度な仕事に思えますが、ベアトリスさんは
「悪い色なんてありませんし、悪い趣味もない。
何も心配せず、好きな色を選んで、
あとはちょうどいい調和を見つければいいのです」と、
ちっとも力むところがありません。
最近気に入っているというグリーンは、
濃淡の違いやプリント、素材違いなどで、
多様に登場しています。
「パリから70kmほどのフォンテーヌブローに
セカンドハウスを買って以来、夫はガーデニングに夢中です。
ご覧ください、
ここにも彼の『庭』があって、私は触れないのですよ(笑)。
きっとセカンドハウスの影響で、私も
グリーンという色をたくさん取り入れているのでしょう。」
ではブルーのドアの向こう、キッチンへと進みましょう。
…②へ続く
Keiko SUMINO-LEBLANC
パリ在住ライター・コーディネーター 日仏語翻訳者
1997年からパリに移住。
パリでの結婚・子育てを経て
フリーランスライター・コーディネーターとして活躍中。食とライフスタイルを専門とするジャーナリストとして、
フランス、日本の数々の雑誌・メディアに寄稿。また、翻訳家として単行本も共著。